介護施設を利用するのに、凄く抵抗があるおばあちゃん。
その娘さんからの相談がありました。
今でこそ、介護施設の利用も増えてきてはいますが、現在の高齢者世代では、「姥捨山」のイメージが今だに目強く残っています。
姨捨山:おばすてやま
役に立たなくなった老人を山に捨てたという伝説
goo辞書より引用
本人の気持ちとしては
- 家族に見放され、追い出される。
- 施設に無理矢理押し込まれる。
といったイメージが根強いです。
このような相談は決して少なくなく、一定の割合で相談を受けています。
僕の行う相談の進め方と考え方を解説します。
補足:この方は無事入所され、楽しそうに生活されていますよ。
相談援助のポイント
- 妥協点を見極める
- 本心を聞く
- イメージの払拭
- 本人に理解を求める説明
- 世間話から困っていることを確認する
- 本人の気持ちを理解した上でこちらの気持ちを伝える
妥協点を見極める
こういった話の際、どちらの意見を聞くべきなのか凄く悩みますよね?
僕も悩む事が多く、一方の肩を持つ訳にはいきません。
介護保険のルールにのっとるのであれば、本人の意思が一番なのですが、臨機応変に対応が必要です。
本人と家族、また、介護サービスなど、多角的にみて、ベストな状態を考えていきます。
本心を聞く
一番大切なことは本心を聞くこと
本人と家族ではなかなか本心は言えないものなので、間に入って本心の確認をすることが相談援助です。
「実は仲の悪い娘と一緒に暮らしたい」など本音を漏らす人も一定数いらっしゃいます。
今回の件では、自宅からの申し込みだったので、できたら一度本人と一緒に施設に来ていただけないかと、何度も相談させていただきました。
家に行くことももちろん可能なのですが、施設を実際見ていただく事を目的に設定し、ご家族に頑張ってもらいました。
ここで協力をして頂けない家族は、その後も協力をいただけないと判断しています。
もちろん、協力できる方に限るので、家族の状況により全面的にこちらからアプローチする場合もあります。
イメージの払拭
前述した通り、現在の高齢者はおば捨て山のイメージが強いです。
介護保険が始まる前の施設しか知らないことがほとんどです。
病院の延長みたいな施設で、お部屋も狭く、暗くて汚いみたいなイメージです。
最近の施設はスタイリッシュな所も多く、昔のように病院の延長のような施設は建ちません。
一度、本人が足を運ぶだけで、イメージが一新されることがあります。
本人に理解を求める説明
外出して返ってこれなくなった
火の不始末
排泄の失敗 などなど
これに関して本人は自覚がなく、周りが不安になっていることが多いです。
その中で、独りでいると危ないから、「施設に入って」と家族が伝えますが、独りでもできていると思っている人に何を言っても「独りで大丈夫」と突っぱねるという状況が問題点なのです。
この状況を打開できるのは、本人しかいません。
誰もが施設利用に抵抗があるはずなので、本人から施設に行こうかな?なんて言葉は期待するだけ損です。
でも、施設に足を運んでくれたのならば少しは期待値が上がります。
対応の仕方を間違うと、一気に不信感が募りすぐに家に帰るでしょう。
世間話から困っていることを確認する
まずは、世間話から始めましょう。
施設に来たから後は施設職員にまかせておけばいいとは思わないでください。
施設職員・利用予定者(本人)・家族と集まると、どうしても施設職員と家族が話しをリードしがちです。
施設職員は施設の仕組みやお金のことを、家族はどれだけ自分たちが困っているのかを言い合います。
しかしこれは、本人には響きません。
本人の口から「困っていること」「悩んでいること」「不安なこと」を聞き出すのが優先です。
ゆっくり時間をかけて聞いてあげましょう。
本人の気持ちを理解した上でこちらの気持ちを伝える
一方的に家族の気持ちを伝えていて納得できるのなら苦労はないですよね。
理解してくれないから困っているのです。
でも逆もそうではないでしょうか?
本人も理解してほしいと思っているのです。
家族は理解しようと思っていますか?
まずは本人の気持ちを落ち着いて確認してから、冷静に家族の気持ちを伝えましょう。
ここで大事なのは、100%の理解はできないことです。
無理に理解を深めようとしないことです。
家族の気持ちを冷静に聞いてもらえればそれで良いのです。
ここで焦ると全てが台無しですよ。
後は相談員の腕の見せ所かと思います。
「かわいそう」という気持ち
家族の中には、居宅での介護サービスの利用は良いが、施設利用(入所)に関して抵抗を感じる方がいます。
特に施設利用の話が進んでくると「かわいそう」という感情が生まれる方がいます。
せっかく本人も乗り気になってきたのに、急に家族がかわいそうと感じて辞退されることもしばしば・・・
ですが、この感情は絶対口に出さないでください。
理由は
僕たちが悲しみます
冒頭に戻りますが、僕たちは資格をとって、日々「姨捨山」の運営をしている訳ではありません。
家族や家の替わりはできないまでも、不安の解消や楽しみの提供はしているつもりです。
最終的に家族が施設を理解していないのであれば、話は振り出しに戻ります。
かわいそうに感じる事もあるかもしれませんが、それは施設利用後の家族の関わり方で大きく変わります。
まとめ
施設利用する9割以上の人は、本人の希望ではありません。
その為、初めは家に帰ると何度も訴える人もいます。
でも、1ヶ月もすれば、馴染んで他者と話をしている人も多く、「帰らんでも良いわ」なんて言う人も出てくるくらいです。
「住めば都」ですね
なので、始めのハードルを乗り越えることが最大の難関なので焦らず、ゆっくり話を聞いてあげてください。
時には、相談員や医者などをひっくるめた根回しも必要かもしれませんが、そんなケースは稀です。
まずは話し合いの場を作りましょう。
介護は突然きます。
皆そうやって相談にくるんで間違いない。
だから知って欲しいことをまとめて書いちゃいました。
悩みはだいたいみんな一緒。
少しでも参考になれば嬉しいな。